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気泡掘削工法
気泡掘削工法は気泡の特徴を利用して地盤を掘削し、セメントスラリーで固化させ、ソイルセメント地中連続壁や深層地盤改良を行う工法です。
掘削時に施工機械の掘削部に気泡(場合により少量の水)を圧送し、掘削土と気泡を混合・混練し気泡混合土を造成します。
掘削土、気泡及び水の混合比率を適切な状態に保つことにより掘削土、気泡及び水は分離することなく懸濁状態を保ち、この懸濁状態の気泡混合土を気泡安定液と呼んでいます。
気泡安定液状態を保ちながら掘削及び固化工程を進めることによって、施工に必要な流動性、止水性、溝壁の安定性さらに固化材との混合性が向上します。この結果、施工性の向上、施工費の低減、品質の向上とともに従来工法では施工が難しい地盤への対応が可能となります。
さらに気泡は消泡させることにより排泥量が大幅に減少し、さらに止水性が高いので逸泥・逸水を抑制できるため、環境負荷の低減につながります。
現在、気泡掘削工法をソイルセメント地中連続壁と深層地盤改良の施工機械に適用して、4種類の新工法が実用化されています。施工に際しては、従来の施工機械に小型の起泡プラントを追加することで施工可能です。
ソイルセメント地中連続壁を造成するには施工機械の種類により3種類の工法があり、施工目的により使い分けております。
- AWARD-Ccw工法:気泡掘削工法によるオーガー方式施工機を使用する柱列式ソイルセメント地中連続壁工法
- AWARD-Trend工法:気泡掘削工法によるカッターチェーン施工機を使用する等厚式ソイルセメント地中連続壁工法
- AWARD-Hsm工法:気泡掘削工法による水平多軸回転カッター施工機を使用する等厚式ソイルセメント地中連続壁工法
気泡、消泡について
気泡掘削工法で使用する気泡の原料は主に、アルキルサルフェート系の起泡剤(WTM起泡剤)を使用します。WTM起泡剤は生分解性ですので環境負荷が小さいと言えます。
気泡の製造は起泡プラントに起泡剤1と圧縮空気24を送り込み発泡させたもので、密度は0.04g/cm3、気泡径200μmを標準状態として使用します。気泡安定液に使用する気泡は土中の水や掘削攪拌時の圧力の変動によっても破泡しない物性が必要です。
気泡を消泡させるには消泡剤を使用します。例えば、ソイルセメント造成時には消泡剤を添加したセメントミルクを気泡安定液と混合すると、気泡膜は破泡し気泡同士が寄せ集まって体積が大きくなり、地上に排出されます。
気泡が地上に排出されることにより体積が減少しますので、排泥土量は減少することになります。
気泡安定液とは
掘削土に気泡と水を混合・混練した気泡混合土は適切な気泡量と水量にコントロールすると、土、水と気泡の比重は各々2.7、1.0、0.04と大きく異なっていても分離することなく懸濁状態を保ちます。適切な気泡量、水量は掘削土の土性値(細粒分含有率P、細粒分の液性限界wL、粗粒分の比表面積S)により異なりますので、事前に掘削土層の土質試験が必要です。
気泡安定液とは掘削土と気泡および水が分離することなく懸濁状態を保っている安定液で、気泡掘削工法では気泡安定液を使用します。
施工状態の気泡安定液の状態を示します。
気泡掘削工法の特徴
気泡掘削工法は掘削注入材として気泡を使用しますので、掘削注入材としてセメントミルクやセメントベントナイトミルクを使用する場合に比べて以下に述べるような様々な特徴があります。
環境負荷が少ない
- 掘削排泥土量が少ない
従来のベントナイト系安定液に代えて、気泡安定液を使用することで掘削時の溝壁からの逸水等による安定液のロス率を低減し、造成時には消泡剤により気泡を破泡・脱泡させることによって、使用材料(セメント、水)の低減と、発生泥土の削減が可能となります。
施工費が安価
- 汚泥発生量が低減するので汚泥処理費が低減する。
- 気泡添加により,少量の水で固化材の流動性を確保でき,セメントスラリーのW/Cを低減できるため,単位セメント量を従来工法より20~40%削減できます。
- 気泡添加による流動性向上により,固化材の均質な混合・攪拌とともに掘削機械のカッタートルク負荷を低減できるため,高速混合攪拌の実現によって施工品質や施工能率を向上できます.
- 作業用地の縮小が可能
気泡製造、注入設備が小規模であり、また発生泥土が低減するため作業用地が縮小できます。
高品質なソイルセメント壁の構築ができる
- 遮水性の高い高品質な連続壁の築造ができる
気泡安定液により掘削土の流動性を高めるとともに、TRD掘削機による混合・撹拌により深度方向に強度のばらつきの少ない均質で目違いのない連続した遮水壁を築造できます。
さらに大深度への対応が可能です。
施工が困難な地盤での施工が容易である
施工及び施工管理が容易
- 溝壁の安定性及び止水性の向上
気泡安定液は、従来のベントナイト系安定液に比べて溝壁内の不透水層の形成が早く、比較的粗い砂礫層においても不透水層の形成が可能であり、掘削時の溝壁安定性、止水性の向上が図れます。
- 機械負荷の低減による掘削性能の向上
土粒子、間隙水、気泡から構成される気泡安定液は、増粘剤等の添加材を用いるベントナイト系安定液に比べ粘性が低く、気泡によるベアリング効果、カッタービットへの掘削土の付着減少によりカッター回転トルクが低下し、掘削性能が向上します。
- 作業用地の縮小が可能
気泡作製、注入設備が小規模であり、また発生泥土が低減できるため、作業用地の縮小が可能です。
施工管理・品質管理について
施工管理は各工法(AWARD-Ccw工法、AWARD-Trend工法、AWARD-Hsm工法AWARD-Demi工法)により多少の差異はあるが、基本的には掘削施工時の気泡安定液の比重とテーブルフロー値を計測し、あらかじめ作成した気泡安定液管理図にプロットし、正常な範囲から逸脱しないように気泡添加量と加水量により調整する。
なお、施工管理の基となる気泡掘削の理論に関しては下記資料及び各施工方法の施工・積算マニュアルを参照して下さい。
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溝壁の安定について
地下工事においては溝壁の安定を保つのは非常に重要なことです。
安定液を使用する場合は泥水圧により溝壁の安定をとりますが、
粗い砂礫土においても気泡安定液は泥水圧を加え易い傾向があります。
この理由は、微小な気泡が砂礫土中に貫入し、不飽和層を形成することにより
難透水層ができるものと考えられます。