気泡安定液とは
気泡安定液は掘削土に微細な気泡と水を添加・混練した均質な懸濁液です。
気泡安定液の性能
気泡安定液が安定液として具備すべき条件として、以下の4条件を満たすことといたしました。
気泡が掘削時に消泡しないこと
気泡安定液が分離が生じないこと
溝壁の安定性が優れていること
気泡安定液は所定の流動性をもっていること
掘削時の気泡の消泡条件
乾燥した状態の掘削土に気泡を添加し混合しますと、気泡の膜は乾燥した土に吸収され破泡します。この乾燥した土の状態を表すために、土を粗粒分と細粒分に分けて考え、
粗粒分:表面乾燥状態以上の状態であれば破泡しないとしました。
細粒分:細粒分の土を使い収縮限界試験を行い、収縮限界以下であれば破泡しないと考えました。
以上のような考えで気泡が破泡しない含水比(最小含水比 wmin)を求めることができます。
実際の施工条件を考えると、掘削地盤が地下水位以下の場合には気泡の消泡を考える必要なないと思われますが、地下水位以上の地盤の掘削時には消泡が生じる可能性は高いので、この際には気泡に少量の水を混合した気泡混合水を掘削土に添加しながら掘削を行います。
気泡安定液の分離条件
気泡安定液は掘削土、気泡及び水の混合体です。これらの比重は掘削土は2.7、気泡は0.04、水は1.0と比重差が大きいので分離が生じないような配合を決めることが大切です。
掘削土、水及び気泡が懸濁状態(分離が生じない状態)を保っている気泡安定液に徐々に水を加えると、懸濁状態が崩れる状態が発生します。この時の気泡安定液の含水比を分離含水比(wsep)と呼んでいます。この分離が生じるときの分離含水比を、掘削土を粗粒分と細粒分に分けて、多くの実験を行い重回帰分析を行い実験式を求めました。
その結果、掘削土の粗粒分に関しては比表面積(S)と気泡添加率(Q)の影響を受けることが判ったので、SとQを変数として重回帰分析を行い、粗粒分に関する実験式を求めました。
細粒分に関しては分離含水比に影響を与える要因は液性限界(wL)であることが判りました。
以上の結果より、掘削土の粗粒分と細粒分の分離含水比に対応する水量の和を掘削土の乾燥質量に対する含水比で表しました。
この実験式は掘削地盤の含水比が5~80%の範囲では実用的に使用できると考えています。
溝壁の安定性について
気泡安定液による溝壁安定化のメカニズムは、微小な独立気泡が溝壁周辺の原地盤の土粒子間隙部分に入り込むことにより、ベントナイト系安定液のマッドケーキと類似した難透水層が掘削溝中に形成され、泥圧が溝壁に伝わることにより溝壁の安定化が図られます。
また、不透水層の形成までの時間がベントナイト安定液よりも早く比較的粗い砂礫層にいても不透水層の形成が可能です。
また、不透水層の形成までの時間はベントナイト安定液よりも早く比較的粗い砂礫層にいても不透水層の形成が可能です。
さらに、溝壁の安定を保つには気泡安定液の比重を1.05以上に保つことが必要です。なぜなら、気泡安定液では気泡を多く入れすぎる、例えば掘削体積1m3に対し概略450ℓ以上の気泡を添加すると、比重は1.0以下となるので、過剰な気泡の添加は溝壁の安定にとって逆効果です。
流動性について
気泡掘削工法では気泡安定液及びソイルセメント(気泡安定液にソイルセメントを添加・混練したもの)流動性を表すためにテーブルフロー値(TF値)を使用しています。
砂から粘性土までの各種の土を使用し、土の物性値とTF値の関係を実験式で求めると、下式で表せます。
TF=αw+β
ここで、w:含水比 α:気泡添加率(Q)、細粒分含有率(P)の関数 β:気泡添加率(Q),比表面積(S)、細粒分含有率(P)の関数
上式によると気泡安定液に大きな影響を及ぼす要因は気泡添加率と含水比です。気泡掘削工法では排泥土量の削減を図るために気泡を注入し、できるだけ加水しないようにしています。なぜなら、掘削時に添加した気泡は固化時にほとんど消泡させることができますので、排泥土量は掘削土を固化させる(ソイルセメント)のに必要なセメントスラリーと等しくなります。
なお、気泡を添加すると流動性が得られるかに関しては、気泡のベアリング効果によるものと考えられます。ベアリング効果とは、土粒子の間隙に気泡が満たされることによって、骨格構造を形成していた土粒子間が離され土粒子間に生じる摩擦を軽減させる効果です。
気泡掘削工法の施工管理
土質試験、配合試験
気泡掘削工法では設計書に規定された強度、透水係数等を満たすソイルセメント連続壁を造成するために、改良対象範囲の土質試料を採取し、土質の物性試験を行う。
次に施工に先立って室内配合試験を実施し、掘削時の気泡添加率及び加水量と固化時の固化材の添加量、種別、水セメント比、消泡剤量等を決める。
施工管理